はじめに:中国語学習の最大の壁「発音」
中国語を学び始めると、多くの学習者が「発音の壁」にぶつかります。
「文法はシンプル」「漢字だから意味は推測できる」と言われる一方で、発音だけは日本語と大きく異なり、最初に挫折する原因になりがちです。
たとえば「mā(媽:お母さん)」と「mǎ(馬:馬)」は、声調が違うだけでまったく別の意味になります。日本語で「はし」が「橋」「箸」「端」と意味が変わるような現象が、中国語では発音そのものに強く結びついているのです。
つまり、中国語学習で発音をおろそかにすると「聞き取れない・通じない」状態が長引いてしまいます。逆に、最初に発音の基礎を固めれば、その後のリスニング力・会話力が格段に伸び、学習効率が大きく変わります。
この記事では、ピンインの仕組み・子音と母音の特徴・四声のコツを詳しく解説し、さらに日本人が苦手な音の克服法まで踏み込みます。これから中国語を学ぶ方も、すでに学習を始めている方も、発音力を高めることで学習が加速するはずです。
中国語発音の基礎を知ろう
中国語の発音は、主に 「ピンイン(拼音)」「声母(子音)と韻母(母音)」「四声(声調)」 の3要素で構成されています。ここを理解することが、すべてのスタート地点になります。
ピンインとは?ローマ字との違い
ピンインは、中国語の音をアルファベットで表記したものです。漢字には発音記号が存在しないため、学習者が正しく読めるように「音のガイド」として使われています。
ただし注意すべきは、「ローマ字と同じ文字が使われていても、読み方は必ずしも同じではない」という点です。
- 例1:「q」→「チ」に近い音(日本語の「き」とも違う)
- 例2:「x」→「シ」に近いが、舌の位置がより前に出る
- 例3:「zh」→「じ」ではなく、舌を巻き込んだ独特の音
つまり、ピンインは「見た目がアルファベット」でも「読み方は中国語独自のもの」であるため、ローマ字読みの感覚で覚えると大きな誤解につながります。
💡 ポイント:ピンインは「発音記号の代わり」と考えること。表記を見て「どう口を動かすか」を即座に思い浮かべられる状態を目指しましょう。
子音(声母)
中国語の子音は21種類存在します。日本語に近い音もありますが、特に難しいのは 舌の位置と息の使い方 による違いです。
例を挙げると:
- p と b → 両方とも「パ行」ですが、p は息を強く吐く有気音、b は息を抑える無気音。
- zh / ch / sh → 日本語の「じ・ち・し」とは似て非なる音で、舌を奥に巻き込む動作が必要。
- r → 英語の r とも日本語のラ行とも異なる、独特の巻き舌音。
日本語では有気音・無気音の区別が存在しないため、学習者が「同じ音に聞こえる」と感じやすいポイントです。正しく発音するには、息の強弱を意識するトレーニングが欠かせません。
母音(韻母)
中国語の母音は36種類と豊富で、日本語の「あ・い・う・え・お」だけではカバーできません。特に苦手とされるのが:
- ü(ウムラウト):「ユ」とも「ウ」とも違う。唇を突き出しつつ「イ」と発音する感覚。
- e:日本語の「エ」ではなく、喉を少し開いて「ア」と「オ」の中間のように発音。
- i:子音によって音が変化(例:zi, ci, si の i は「ウ」に近い)。
これらは「日本語に存在しない母音」なので、感覚で覚えるのではなくネイティブ音声を真似し続けることが必須です。
四声(声調)の重要性
中国語の最大の特徴が「声調」です。声の高さの変化によって意味がまったく変わります。
- 第一声(¯):高く平ら(mā=お母さん)
- 第二声(´):中から上に上がる(má=麻)
- 第三声(ˇ):下げてから上げる(mǎ=馬)
- 第四声(`):一気に下げる(mà=叱る)
声調を間違えると「意味が変わる」どころか「まったく別の単語」として認識されてしまいます。例えば「mā(お母さん)」を「mà(叱る)」と発音すると、大変失礼な意味になってしまいます。
💡 練習法のコツ:
- 「ドレミファ」の音階で高さをイメージ
- 短い単語を声調ごとに歌うように練習
- 第二声は「え?」と聞き返すときの調子、第四声は「だめ!」と叱るときの調子
発音の三位一体
ここまで見てきたように、中国語の発音は ピンイン表記・子音母音・四声 が組み合わさって成立しています。
1つでも欠けると正しい音にならず、通じない原因になります。
- ピンイン → 音の「地図」
- 子音・母音 → 音の「材料」
- 四声 → 音の「メロディ」
この3つをバランスよく理解し、練習することが中国語発音上達の第一歩です。
日本人が苦手な発音ベスト10
1. zh / ch / sh:「じ・ち・し」との違い
日本人が最初に混乱するのがこのセットです。ローマ字に似ているため「じ」「ち」「し」で発音しがちですが、中国語では舌を奥に巻き込み、上あごの裏に近づけるのがポイントです。
例:
- 知道(zhīdào:知っている)
- 出去(chūqù:出ていく)
- 书(shū:本)
もし「じーだお」と日本語風に発音すると、「鸡刀(鶏と包丁?)」のように誤解されかねません。
💡 練習法:
鏡を見ながら舌を軽く反らし、「る」と「じ」を同時に言う感覚で練習しましょう。特に ch は息を強く吐き出す(有気音) ことを意識してください。
2. r(巻き舌音)
中国語の「r」は、日本語のラ行とも英語のRとも異なる独特の音です。舌を軽く奥に巻き込み、唇をわずかに丸めながら発音します。
例:
- 人(rén:人)
- 日(rì:日)
誤りやすい発音は「レ」「リ」と日本語風にしてしまうこと。これではネイティブには「l」と区別がつかず意味が変わります。
💡 練習法:
「ジュ」と日本語で言うときの口を作り、そのまま「ル」と発音してみてください。録音してネイティブと比べるのも有効です。
3. ü(ウムラウト母音)
日本語に存在しない母音で、多くの学習者が挫折する音です。「ユ」とも「ウ」とも違い、唇を前に突き出しながら「イ」と言う感覚で出します。
例:
- 女(nǚ:女)
- 绿(lǜ:緑)
誤って「nu」と発音すると「怒る(怒)」になってしまうため、意味が大きく変わります。
💡 練習法:
「イ」と言いながら唇をすぼめて前に突き出してみましょう。最初は違和感がありますが、鏡で形を確認すると上達が早いです。
4. e(特殊な母音)
日本語の「エ」とは全く違う音で、喉の奥を開いて「ア」と「オ」の中間を出す感覚です。
例:
- 饿(è:お腹が空く)
- 热(rè:暑い)
学習者がよくやる間違いは、日本語の「エ」として発音してしまうこと。その場合「饿(è)」が「エ」となり通じません。
💡 練習法:
ため息をつくように「アー」と言い、その口のまま少し閉じて「エー」と言うと近い音になります。
5. i のバリエーション
中国語の「i」は日本語の「イ」だけではありません。前後の子音によって変化します。
- zi, ci, si の i → 日本語の「ウ」に近い
- zhi, chi, shi の i → 母音をほとんど感じさせない曖昧音
例:
- 自(zì:自分)
- 思(sī:考える)
💡 練習法:
単独の「i(イー)」と区別して覚えること。ネイティブ音声を真似して録音比較が必須です。
6. u の丸唇音
「u」は単なる「ウ」ではなく、唇を強く突き出して丸くするのが中国語流です。
例:
- 出(chū:出る)
- 书(shū:本)
日本語の「ウ」で発音すると平坦になり、聞き取りにくくなります。
💡 練習法:
口笛を吹く形にして「ウー」と言ってみましょう。
7. z / c / s(有気音と無気音)
中国語には「有気音(強く息を出す)」と「無気音(息を抑える)」の区別があり、日本語には存在しません。
- z(無気音):「ズ」に近い
- c(有気音):「ツァ」と強く息を出す
- s(無気音):「ス」に近い
例:
- 在(zài:いる)
- 草(cǎo:草)
💡 練習法:
ティッシュを口の前に置き、息で揺れるかどうかで確認すると違いが分かりやすいです。
8. 声調の混乱(特に2声と3声)
日本人学習者が最も苦戦するのが、声調の区別です。特に「má(2声:麻)」と「mǎ(3声:馬)」の違いは、日本語には存在しないため混同しがちです。
💡 練習法:
- 2声=質問するときの「え?」
- 3声=ため息をつきながら「ふーん?」
音階で練習するのも効果的です。
9. 軽声(Neutral Tone)
軽声は声調をつけず、短く弱く発音する特殊な音です。
例:
- 妈妈(māma:お母さん)→ 2つ目の「ma」は軽声
💡 練習法:
強く読まずに「小さく添える」感覚で声を出すと自然になります。
10. 鼻母音(-n と -ng の違い)
「-n」と「-ng」の違いも日本人が苦手とするポイントです。
例:
- 安(ān:安心)
- 昂(áng:昂る)
「-n」は舌先を歯茎に当てて止め、「-ng」は舌の奥を使って鼻から抜きます。
💡 練習法:
「アン」と「アング」を交互に言い、録音して違いを確認しましょう。
発音練習の効果的なステップ
中国語の発音を上達させるためには、「ただ繰り返す」だけでは不十分です。
学習者の多くは、最初に正しい音を理解しないまま自己流で練習を重ねてしまい、結果としてクセが定着してしまいます。そうなると矯正に倍以上の時間がかかってしまうのです。
ここでは、初心者から中級者まで効果を実感できる 4つのステップ を紹介します。
それぞれを順番に実践することで、発音力を効率よく高めることができます。
ステップ1:口と舌の形を意識する
中国語発音の最大のポイントは 「舌の位置と口の形」 です。
日本語は舌の動きが比較的シンプルな言語ですが、中国語では「舌を奥に巻く」「舌を前に突き出す」「唇を丸める」など細かい動作が多く、ここを意識できるかどうかが通じる・通じないを分けます。
- zh / ch / sh → 舌を奥に巻き込む
- j / q / x → 舌を前に出す(口の前方で発音)
- ü → 唇を丸めて前に突き出しながら「イ」と言う
💡 実践法
- 鏡を見て舌の位置を確認しながら練習する
- スマホで横顔を撮影して、自分の口の動きをチェックする
こうした 目で確認する作業 を取り入れると、誤った動作を防げます。
ステップ2:音読+録音チェック
多くの学習者が「発音して終わり」にしてしまいますが、実は録音して聞き返すことが上達の近道です。
自分の発音を客観的に聞くと、
- 思っていたより声調が平坦だった
- üが「u」になっている
- 有気音が弱く、息が出ていない
といった問題に気づけます。
💡 実践法
- ネイティブ音声(アプリ・教材・YouTube)を一文流す
- 自分で同じ文を録音する
- 並べて聞き比べる
このサイクルを繰り返すだけで、発音の改善点が明確になります。
ステップ3:シャドーイング
リスニングと発音を同時に鍛える最強の方法が シャドーイング です。
これは「音声を聞きながら、ほぼ同時に声を出して追いかける練習法」で、英語学習でも有名ですが、中国語でも極めて効果的です。
- ネイティブの 声調・リズム・間の取り方 を丸ごとコピーできる
- 自然なイントネーションが身につく
- 聞き取れない音が「自分の発音できない音」だと気づける
💡 実践法
- 短い音声(1〜2行の会話)を用意
- 最初はスクリプトを見ながら追いかける
- 慣れてきたらスクリプトを見ずにシャドーイング
初心者はスピードについていけないので、ゆっくりした教材を選ぶのがコツです。
ステップ4:ネイティブにチェックしてもらう
どれだけ独学で練習しても、必ず「自分では気づけないクセ」が残ります。
例えば:
- 「二声」が微妙に上がり切っていない
- 「r」が「l」に聞こえる
- 鼻母音が曖昧になっている
こうした細かいズレは、ネイティブスピーカーや経験豊富な先生にしか指摘できません。
💡 実践法
- オンライン中国語レッスン(1回15分〜)を活用
- 自分の録音を先生に送り、フィードバックをもらう
- 指摘された箇所だけを重点的に練習
特に初期段階で数回でもプロに見てもらうと、矯正の効率が飛躍的に上がります。
まとめ:4ステップを回すことが最短ルート
- 舌と口の形を確認する
- 音読+録音で自己チェック
- シャドーイングでリズムを身につける
- ネイティブに修正してもらう
このサイクルを繰り返すことで、中国語の発音は確実に改善します。
「正しい音を理解し → 自分の発音を分析し → 修正を受ける」この3要素を意識することが、学習者にとっての最短ルートです。
発音を上達させるコツと心構え
中国語の発音は、ただ音を真似するだけではなかなか身につきません。特に日本人学習者は「通じればいい」という意識や、独学の限界によって発音を軽視しがちです。ここでは 上達のための考え方・学習姿勢・具体的な工夫 を徹底解説します。
「通じればいい」は危険な落とし穴
中国語では「ちょっとの発音の違い」で意味が大きく変わります。例えば:
- mā(媽:お母さん) ↔ mà(罵:叱る)
- shū(書:本) ↔ sū(酥:サクサクしている)
日本語では多少イントネーションを間違えても意味は伝わりますが、中国語はそうはいきません。発音を軽視すると、誤解を招いたり、相手にとって理解不能な音になったりするのです。
💡 ポイント:最初から「正しい音を出す」習慣をつけること。最初に身につけたクセを直すのは数倍大変です。
繰り返し練習は「筋トレ」と同じ
発音は「頭で理解する」だけでは定着しません。必要なのは 口・舌・喉の筋肉のトレーニング です。
- zh / ch / sh → 舌を巻く筋肉
- ü → 唇を突き出す筋肉
- 四声 → 声帯コントロール
これらは日常の日本語ではほとんど使わないため、新しい筋肉の使い方を身体に覚えさせる必要があるのです。
💡 具体的工夫:
- 毎日5分でも「筋トレ」として声を出す
- 鏡の前で口の形をチェックする
- 短時間でも「毎日やる」ことが圧倒的に効果的
筋トレと同じで、短時間でも毎日の積み重ねが大きな変化を生みます。
独学と指導のバランスを取る
独学でもある程度は発音を学べます。しかし、完全に独学で完璧に発音を身につけるのは困難です。なぜなら 「自分の間違いに気づけない」 からです。
- 独学の強み → 好きな時間に練習できる、コストが安い
- 独学の弱み → 間違った音をそのまま覚えてしまうリスク
一方で指導を受ければ、1回のフィードバックで数週間分の誤学習を防げます。特に 最初の数か月だけでも発音指導を受けることで、その後の学習効率が劇的に変わります。
💡 理想的な組み合わせ:
- 普段 → 独学で反復練習
- 定期 → ネイティブ講師に矯正してもらう
「独学100%」ではなく「指導をスパイスとして取り入れる」意識が大切です。
モチベーションを保つ工夫
発音練習は地味で成果が見えにくく、途中で投げ出してしまう人が多い分野です。そこで必要なのが「継続の仕組み」を作ることです。
1. 小さなゴールを設定する
「一週間で zh/ch/sh をクリアする」など、短期で達成感を得られる目標を作りましょう。
2. 録音比較で成長を可視化
1か月前の自分の声と今の声を比べると、意外なほど成長が実感できます。
3. 他人に聞いてもらう
学習仲間や講師に「今の発音どう思う?」と尋ねるだけで客観性が得られます。
4. 好きなフレーズで練習
自分の好きな歌詞やドラマの台詞を練習素材にすると、飽きにくくなります。
発音矯正は「早ければ早いほど良い」
発音の矯正は、学習初期に取り組むのが最も効率的です。
学習が進み、中国語で会話できるようになってから発音矯正をしようとすると、クセが完全に染みついてしまい修正が困難になります。
よくある失敗パターン:
- 単語や文法ばかり学び、発音は後回しにする
- 聞き返されても「通じたからOK」と思ってしまう
- 中級レベルに達したときに「通じない壁」にぶつかる
💡 解決策:最初から発音を重視すること。これは将来の自分への最大の投資です。
リスニング力と発音は表裏一体
発音の上達は、リスニング力の向上にも直結します。
なぜなら「自分が正しく発音できない音は、耳でも正しく聞き取れない」からです。
例えば、多くの日本人は 「二声」と「三声」 の聞き分けに苦労します。これは「自分で正しく発音できないから」耳でも区別できないのです。逆に、発音練習を繰り返すことで「耳が敏感になり、聞き取りが改善する」という効果が出ます。
💡 つまり、発音練習は「話すため」だけでなく「聞き取るため」にも不可欠な訓練なのです。
大人の学習者が気をつけるべきこと
子供と比べて、大人は発音習得に時間がかかると言われます。これは筋肉や耳の柔軟性の問題ではなく、固定観念や照れが邪魔するからです。
- 「こんな大げさに口を動かすのは恥ずかしい」
- 「日本語と同じでいいだろう」
- 「ネイティブみたいにはなれない」
こうした考えを持ってしまうと、発音の伸びが止まります。大人学習者ほど 「子供のように真似する素直さ」 が必要です。
コツと心構えのまとめ
- 「通じればいい」は危険 → 意味が大きく変わるため、正確さを追求すべき
- 繰り返し練習は筋トレと同じ → 短時間でも毎日の習慣化が大切
- 独学+指導を組み合わせる → 自己流だけでは限界、指摘で効率化
- モチベーション管理 → 小さな目標・録音比較・好きな教材で継続
- 発音矯正は初期から → 後で直すのは何倍も大変
- 発音=リスニング力の土台 → 発音練習は聞き取り力も伸ばす
- 大人学習者は子供のように真似る素直さを持つ
よくある質問Q&A
Q1. 中国語の発音はどれくらいで身につきますか?
学習者から最も多く寄せられる疑問が「発音はどのくらい練習すれば通じるようになるのか?」というものです。
結論から言うと、基礎的な発音(ピンインと四声)が「相手に通じるレベル」になるには、およそ3〜6か月の集中練習が必要です。ただし、これは「毎日10〜20分程度の練習を継続した場合」の目安です。
✔ 短期間で効果が出るケース
- 毎日音読や録音を習慣化している
- ネイティブから早い段階でフィードバックをもらっている
- 発音矯正を意識して学習を開始した
✔ 時間がかかるケース
- 発音を軽視して単語暗記ばかりしている
- 自己流で半年以上練習し、間違いが定着してしまった
- レッスンで指摘されても直そうとせず放置している
重要なのは「スタートの段階で正しい発音を身につけること」です。最初に正しい型を学び、毎日少しずつ積み重ねることで、半年以内に「発音の壁」を越えることができます。
Q2. 発音は独学だけで身につきますか?
独学でも一定レベルまでは可能です。教材・アプリ・YouTubeなどを活用すれば、ピンインのルールや四声の仕組みは理解できますし、反復練習で音を出せるようにもなります。
しかし、独学には大きな落とし穴があります。それは 「自分の発音が正しいかどうか確認できない」 という点です。自分では正しく発音しているつもりでも、実際には舌の位置がズレていたり、声調が上がりきっていなかったりすることがよくあります。
この状態で練習を重ねると、誤った発音が習慣化して矯正が非常に困難になります。特に zh/ch/sh や r、ü のような日本語にない音は独学では正確さを判断できません。
理想は「独学+フィードバック」の組み合わせです。
- 普段 → アプリや教材で独学練習
- 定期的 → ネイティブ講師に矯正してもらう
独学100%にこだわる必要はありません。むしろ、独学のメリットを活かしつつ、必要な場面だけ専門家の助けを借りる方が効率的です。
Q3. 発音矯正を始めるのに遅すぎることはありますか?
いいえ、決して遅すぎることはありません。大人になってからでも、正しい方法で練習すれば確実に改善します。
ただし注意点はあります。学習を始めて数年経ってから発音を直そうとすると、クセが完全に定着しているため矯正に時間がかかるのです。例えば「r」をずっと「ラ」と発音してきた人は、舌の動きを修正するのに半年以上かかる場合もあります。
一方で、学習初期から発音に重点を置けば、短期間で正しい型が身につきます。つまり、発音矯正は「早ければ早いほど効果が大きい」ものなのです。
もし既に中級以上になっていても、諦める必要はありません。実際に、長年自己流で学んできた人が半年〜1年の集中的な発音矯正で大きく改善したケースもあります。
💡 ポイント:
- 学習初期 → 「正しい発音の型」を早めに習得する
- 中級以降 → 「直したい音」を絞って集中的に矯正する
Q4. 発音ができるようになると、学習にどんな変化がありますか?
発音が改善すると、学習全体に大きなプラス効果があります。
- 会話がスムーズになる
正しい音を出せるようになると、相手に聞き返される回数が減り、会話のテンポが良くなります。 - リスニング力が急上昇する
「自分で発音できる音は聞き取れる」という法則があり、発音矯正をすればするほど耳も育ちます。 - 語彙の定着が早くなる
単語を覚えるときに「文字」だけでなく「音」とセットで記憶できるようになるため、忘れにくくなります。 - モチベーションが上がる
「通じた!」という成功体験が自信になり、学習を続ける原動力になります。
つまり発音は「話す力」だけでなく「聞く力」「覚える力」「学び続ける力」にまで影響する、学習の土台なのです。
Q5. 発音矯正はどのくらいの頻度でやれば良いですか?
理想は 毎日5〜10分程度の練習を継続することです。長時間まとめて練習するより、毎日少しずつ繰り返した方が定着しやすいのです。
- 毎日:音読+録音チェック
- 週2〜3回:短いシャドーイング練習
- 月数回:ネイティブ講師に発音チェックしてもらう
このように「毎日少し+定期チェック」で進めるのが最も効率的です。
💡 ワンポイント:
発音は筋肉運動なので、練習をやめると元に戻りやすいです。英語や楽器と同じで「細く長く続けること」が重要です。
まとめ:中国語発音を制する者が中国語を制する
ここまで、中国語の発音に関する基礎知識から具体的な練習法、さらには日本人がつまずきやすいポイント、そしてモチベーションの保ち方までを徹底的に解説してきました。
もう一度、重要なポイントを整理しておきましょう。
この記事の総復習
- 中国語発音は学習の最初の壁であり、最大のカギ
- 文法はシンプルでも、発音ができなければ会話は成立しない。
- 「mā」と「mà」が意味を真逆に変えてしまうように、声調は絶対に無視できない。
- 文法はシンプルでも、発音ができなければ会話は成立しない。
- ピンインは「発音の地図」
- ローマ字とは似て非なるもの。見た目に惑わされず、音そのものを覚えること。
- 子音(声母)・母音(韻母)・声調(四声)が組み合わさって初めて正しい音になる。
- ローマ字とは似て非なるもの。見た目に惑わされず、音そのものを覚えること。
- 日本人が苦手な発音は共通している
- zh/ch/sh、r、ü、e、i のバリエーション、u、z/c/s、2声と3声、軽声、鼻母音。
- これらは「日本語にない音」または「似ていても異なる音」であるため、意識的に練習しなければ習得できない。
- zh/ch/sh、r、ü、e、i のバリエーション、u、z/c/s、2声と3声、軽声、鼻母音。
- 練習ステップはシンプルだが強力
- 舌と口の形を確認 → 録音で自己チェック → シャドーイングでリズム習得 → ネイティブに矯正してもらう。
- このサイクルを繰り返すことで、最短で改善できる。
- 舌と口の形を確認 → 録音で自己チェック → シャドーイングでリズム習得 → ネイティブに矯正してもらう。
- 心構えが上達を左右する
- 「通じればいい」は危険。正確さを追求する意識が必要。
- 発音練習は筋トレと同じ。毎日少しでも続けることが効果的。
- 独学と指導のバランスを取り、継続できる仕組みを作ること。
- 「通じればいい」は危険。正確さを追求する意識が必要。
- よくある疑問の答え
- 習得までの目安は3〜6か月。
- 独学だけでは限界があり、フィードバックが必須。
- 発音矯正は早ければ早いほど効果的。
- 発音力は会話・リスニング・記憶力を底上げする。
- 習得までの目安は3〜6か月。
「発音力」があなたの学習を加速させる
中国語の発音を身につけることは、単に「ネイティブっぽく話すため」ではありません。
実は 中国語全体の学習効率を上げるための投資 です。
- 正しく発音できる音は、リスニングでも聞き分けやすい
- 単語を音で覚えると記憶が定着しやすい
- 会話がスムーズになり、自信がつく
つまり発音は「話す力」だけでなく「聞く力」「覚える力」まで底上げする、学習の基盤そのものなのです。
今日からできる行動リスト
- ネイティブ音声を使って、毎日5分だけ音読する
- 録音して自分の声を聞き返す
- 苦手な音を1つ決めて集中的に練習する
- 月に数回はオンラインレッスンで矯正してもらう
- 1か月後に「成長した自分の発音」を録音で確認する
小さな一歩を積み重ねることで、必ず大きな成長につながります。
最後に:発音を制する者が中国語を制する
中国語学習において、発音は避けて通れないテーマです。
最初は難しく感じるかもしれませんが、正しい方法で取り組めば、数か月で確実に変化が実感できます。
「発音を制する者が中国語を制する」 ——これは大げさではありません。
今日から小さな練習を始め、正しい音を一つずつ自分のものにしていきましょう。
あなたの中国語学習は、発音の習得によって確実に加速します。
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