中国語を聞き取って書こうとすると、音は分かったのに漢字が出てこないことがあります。その一文字だけで「リスニングができなかった」と判断するのは、もったいないところです。ディクテーションでは、聞こえた音と、文字にできた部分を分けて残すと、次の練習が選びやすくなります。
最初から会話を全文書く必要はありません。短い一文、または金額など一つの情報に絞り、空欄やピンインも使いながら確かめましょう。
ディクテーションは、聞いて書き取り、本文と比べる練習
音声を聞いて内容を書き取り、元の本文と照合するのがディクテーションです。正解の文字を写す書写とは、確認するものが違います。本文は後から開き、聞いた段階でのメモを消さずに残します。
使うのは、本文や訳を確認できる音声です。知らない語が多い長文より、学んだ語の多い一文を選びます。書き取れなかった理由を切り分ける基本は中国語のリスニングの進め方でも扱っています。ここでは、実際の記入と答え合わせを進めます。
漢字が出なければ、ピンインや空欄で残す
次は記入方法を考えるための例です。普通話・簡体字で、ピンインは元の声調を示し、軽声には声調記号を付けません。
我明天去图书馆。
Wǒ míngtiān qù túshūguǎn.
私は明日、図書館へ行きます。
図書館という語の音と意味は分かるけれど、馆が書けなかったとします。その場合は「我明天去图书guǎn」や「我明天去túshūguǎn」と残せます。ここは、漢字を思い出す課題です。一方、「どこへ行くのか分からない」「qùなのか別の音なのか迷う」なら、音や語彙の確認が必要です。
ピンインの声調まで自信がなければ、迷った音節に「?」を付けます。分からないところを適当な漢字で埋めるより、「我明天去□」と残す方が、止まった場所が見えます。空欄の長さから答えを推測するのでなく、音を聞いたときの状態を残してください。
一文で試す、書き取りの手順
- 最初は内容だけ聞く。誰が何をする話かをつかむ。まだ一字ずつ書こうとしない。
- 短く区切って書く。一つの発話を選び、聞こえた語を記入する。語順も残す。
- 空欄を聞き直す。迷った箇所の前後を含めて聞く。聞き直した回数も必要ならメモする。
- 本文と照合する。元の記入は残し、別の色や別の行に正しい形を書く。
- 本文を閉じて聞く。直した部分を含めて聞き、文の意味を言う。
回数に正解はありません。何度聞いても手掛かりが増えないなら、本文を開いて確認しましょう。聞こえない状態を長く続けるより、どの音・語が結び付かなかったのかを確かめ、聞き直す方が次の作業につながります。
記入例:値段・渡した額・お釣りを分ける
次は、書き取りの記録方法を示す文字だけの自作例です。短文を読み、何の金額かを分類してみましょう。
这本书三十块。我给了店员五十块,店员找给我二十块。
Zhè běn shū sānshí kuài. Wǒ gěile diànyuán wǔshí kuài, diànyuán zhǎogěi wǒ èrshí kuài.
この本は30元です。私は店員に50元を渡し、店員は私に20元のお釣りを返しました。
- 買った物:____
- 商品の値段:____元
- 店員に渡した額:____元
- 返されたお釣り:____元
記入例の答えを確認する
- 本です。
- 30元です。
- 50元です。
- 20元です。
三十块は本の値段、给了店员五十块は店員に渡した額、找给我二十块は自分へ返されたお釣りです。50−30=20と計算できますが、それぞれの金額が何を表すかも本文で確かめます。
実際の書き取りには、本文や解答を確かめられる手元の音声教材を使います。買い物の会話なら上の四欄、予定の会話なら「いつ・どこで・何をするか」など、内容にある情報へ替えてください。最初は数字でメモし、漢字表記の確認は別にして構いません。
「教材名・発話の位置/問い/聞いた時点の記入/本文の答え」を残し、最初の記入を消さずに照合します。商品の値段と渡した額を取り違えたなら、金額を含む発話の前後へ戻ります。引き算でお釣りを推測できた場合も、音からその金額を受け取れたかは分けて確認しましょう。
答えを見た後に同じ音声を聞く回は、復習として記録します。別の短い会話でも同じ種類の情報を受け取れるか試すと、答えを覚えたことと、初めて聞いた内容を理解できたことを分けられます。
間違いは4種類に分けて、一つずつ直す
| 記入した状態 | 確かめること | 次の一手 |
|---|---|---|
| 音を別の語に取り違えた | 子音・母音・声調、語の切れ目。 | 元の語を短い部分で聞き、ピンインと照合する。 |
| 音はメモできたが意味が分からない | 語そのものを知っているか。 | 意味と用例を確認し、音と結ぶ。 |
| 語は分かるが文の内容を取り違えた | 否定、時間、質問と返答の関係。 | 文のまとまりと、誰が何を言うかを確認する。 |
| 意味も音も分かるが漢字が書けない | 漢字の形の想起。 | 音の課題と別にして、その語の表記を復習する。 |
句読点や、数字を算用数字で書いたかどうかも、最初の音の点検とは分けます。目的が試験の書き取りなら、その試験が求める表記に合わせますが、普段の練習では「何を確かめる回か」を決めてから採点しましょう。
次回に使える、一行の復習メモ
「教材名・発話の位置/自分の記入/本文の形/間違いの種類/次に確かめること」を一行に残します。例えば「買い物・支払いの場面/90と記入/100/金額と用件の混同/受け取るお金か値段かを聞く」という形です。
前回直した音声を聞き、本文を閉じても分かるか確かめたら、別の短い会話でも試してください。同じ答えを覚えた練習と、初めての内容を聞いた結果が混ざらず、次に取り組む課題が見えてきます。
金額の読み方が曖昧なら数字と量詞の基本を確認しましょう。記録を続ける工夫は中国語の学習ノートの作り方へ。
参考資料
- TUFS言語モジュール(東京外国語大学21世紀COEプログラム「言語運用を基盤とする言語情報学拠点」):音声と文字を照合する学習手順の参考。
