同じ「中に入る」でも、自分が部屋の中にいれば「入ってくる」、外から見送れば「入っていく」と言えます。中国語の方向補語も、どちらへ動くかと、基準の場所へ近づくか離れるかを分けて考えると選びやすくなります。
最初は、地図よりも部屋や階段を思い浮かべてみましょう。ここでは話し手の位置を各例に添え、来・去、进・出・上などの組合せを練習します。
動詞の後ろで、動く方向を補う
走は歩く、跑は走る動作です。その後ろに来・去や进・出などを置くと、歩いてくる、走って外へ出る、といった動きになります。来は基準の場所へ近づき、去はそこから離れることを表します。
基準は話し手がいる場所から考えると分かりやすいですが、会話で取り上げた場所になることもあります。日本語の「行く・来る」と一語ずつ機械的に置き換える前に、誰の位置から見ているかを確認しましょう。
- 話し手は教室の中。入口の相手に声を掛ける。
请走进来。
Qǐng zǒujìnlai.
歩いて中へ入ってきてください。 - 話し手は教室の外。中へ向かった人を見ている。
他走进去了。
Tā zǒujìnqu le.
彼は歩いて中へ入っていきました。
どちらも進む先は中ですが、来と去が違います。进は外から中への経路、来・去は基準との関係です。この二つを別々に選ぶと、長い形でも分解できます。
上・下・进・出・回を、来・去と合わせる
| 経路 | こちらへ | 向こうへ |
|---|---|---|
| 上へ | 上来 | 上去 |
| 下へ | 下来 | 下去 |
| 中へ | 进来 | 进去 |
| 外へ | 出来 | 出去 |
| 元の場所へ | 回来 | 回去 |
表は人の移動を想像して読むと分かりやすくなります。物を持って移動させるときにも同じ見方を使えますが、全ての動詞と全ての方向を自由に組み合わせるわけではありません。まず例文のまとまりで使ってください。
- 話し手は2階。1階の人を呼ぶ。
你上来吧。
Nǐ shànglai ba.
上がってきてください。 - 話し手は1階。階段を上がった人について話す。
她走上去了。
Tā zǒushàngqu le.
彼女は歩いて上がっていきました。 - 話し手は家の中。子どもが外へ走る。
孩子跑出去了。
Háizi pǎochūqu le.
子どもは走って外へ出ていきました。 - 話し手は居間。姉が台所からこちらへ来る。
姐姐从厨房走出来了。
Jiějie cóng chúfáng zǒuchūlai le.
姉は台所から歩いて出てきました。
回は「戻る」、来・去はその向きを示す
回来はいつも「帰宅する」という意味になるわけではありません。学校や店など、元いた場所へ戻る場合にも使えます。回の戻り先と、来・去の基準を分けて見てください。
- 図書館で、相手に本を自宅へ持ち帰ってもらう。
这本书,请拿回去。
Zhè běn shū, qǐng náhuíqu.
この本は、持ち帰ってください。
同じ本でも、図書館へ返しに来てもらいたい場面とは向きが違います。回を見てすぐ「戻ってくる」と訳さず、最後の来・去まで読みましょう。否定するなら、具体的な出来事が起きなかったのか、これからの動きを止めたいのかも区別します。
場所を言うときは、来・去の前に入れる
行き先の教室などを文に入れると、語順が長くなります。場所を表す目的語は、来・去より前に置きます。まず「歩く+中へ+教室+こちらへ」と区切ってみます。
- 話し手は教室の中。入ってきた人を説明する。
他走进教室来了。
Tā zǒujìn jiàoshì lai le.
彼は歩いて教室に入ってきました。 - 相手に、かばんからノートを出してもらう。
请拿出笔记本来。
Qǐng náchū bǐjìběn lai.
ノートを出してください。
物を表す目的語の位置には、出来事や文の形によって別の並びもあります。一つの並びだけを全てへ当てはめるのではなく、最初は例8・9の場所や物を一つ替えて使ってみましょう。「来・去の後ろへ何でも置ける」とは覚えないことが大切です。
実際の移動を表さない用法もある
方向補語には、動作の始まりや継続などへ意味が広がった形もあります。字の方向だけでは読めないので、まとまりで確認します。
- 听到这个笑话,她笑起来了。
Tīngdào zhè ge xiàohua, tā xiàoqǐlai le.
この冗談を聞いて、彼女は笑い出しました。
笑起来は、上へ移動して笑うという意味ではなく、笑い始めることです。まずは空間の方向を理解し、その後で、よく出会う派生的なまとまりを足していきましょう。
場面から選ぶ3段階の練習
- 人や物が、どこからどこへ動くかを描く。
- 話し手・基準の場所に丸を付け、近づくなら来、離れるなら去を選ぶ。
- 歩く・走る・持つなどの動詞とつなぎ、場所を言うなら位置を確かめる。
教室の中と外を入れ替え、同じ移動を二つの視点で説明してみてください。漢字の並びを暗記するだけでなく、どこを基準にしたかを言えれば、来と去を選んだ理由が分かります。
確認問題
- 自分は教室の中、相手は外です。「入ってきて」と言うなら、走进来・走进去のどちらを使いますか。
- 自分は1階に残り、彼女が上階へ歩きました。来と去のどちらを選びますか。
- 「走进教室来」では、教室は来の前と後のどちらですか。
- 「笑起来」は、体が上へ移動する意味ですか。
答えと解説
- 走进来です。请走进来。
Qǐng zǒujìnlai. こちらのいる中へ近づきます。 - 去です。她走上去了。
Tā zǒushàngqu le. - 来の前です。進む先の場所を来・去の前へ入れています。
- いいえ。ここでは笑い始めることを表します。
場所そのものの説明は方位詞、道を尋ねる場面は道案内の会話、過去の出来事の否定は不と没へ。
参考資料
TUFS言語モジュール(東京外国語大学21世紀COEプログラム「言語運用を基盤とする言語情報学拠点」)
- 中国語文法・単純方向補語1、単純方向補語2、複合方向補語、目的語との語順、派生義:方向・基準・語順の確認。
- ChinGram:Simple directional complement:方向の来・去と軽声、場所の位置。
